一線を越える前に知っておくべき法的リスク
不倫は犯罪ではありませんが、民事上の責任は発生します。慰謝料、時効、最高裁の判断まで、感情と切り離して整理します。
この記事は行為をすすめるものではありません。相手や第三者の同意がない行為、公共の場での行為は法律に触れる場合があります。空想と実行は切り分けて読んでください。
このテーマについて、道徳的な話は世の中に十分あります。ここでは、判断材料としての法的な事実だけを整理します。
確認日: 2026-07-27。個別の事案の判断は事情により異なります。実際に問題が生じている場合は弁護士に相談してください。
犯罪ではない、が責任は生じる
まず前提として、不倫それ自体は犯罪ではありません。 かつて存在した姦通罪は、1947年の刑法改正で廃止されています。
しかし、民事上は別です。配偶者のある人と性的関係を持つことは、他方配偶者の権利を侵害する不法行為(民法709条)にあたるとされ、損害賠償(慰謝料)の対象になりえます。
責任を負うのは、配偶者と不貞相手の両方です。「誘われただけ」「相手が既婚だとは知っていたが、家庭には干渉していない」といった事情があっても、責任が消えるわけではありません。
誰が、誰に請求できるか
請求できるのは、不貞をされた側の配偶者です。請求先は、
- 自分の配偶者
- 不貞相手
の両方、またはいずれか。両方から二重に全額を取れるわけではありませんが、どちらか一方に全額を請求することは可能とされています(その後、当事者間で分担を求める余地はあります)。
つまり、不貞相手が単独で全額を負担する事態は現実に起こりえます。
金額の目安
裁判例では、数十万円から300万円程度の範囲になることが多いとされます。金額を左右する要素として、
- 婚姻期間の長さ
- 未成年のこどもの有無
- 関係の期間と回数
- 離婚に至ったかどうか
- 妊娠の有無
- 主導したのはどちらか
- 反省の有無、発覚後の対応
離婚に至った場合は高額になる傾向があります。
最高裁の重要な判断(平成31年)
ここは誤解が多い部分です。
最高裁は平成31年2月19日の判決で、不貞相手に対する「離婚そのものによる慰謝料」は、原則として請求できないという判断を示しました。例外は、その第三者が「夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をするなどして、離婚のやむなきに至らしめた」と評価すべき特段の事情がある場合に限られるとされています。
ただし、これは「不貞行為そのものによる慰謝料」を否定したものではありません。 不貞行為による精神的苦痛への賠償責任は、引き続き認められます。
「最高裁が不倫相手への請求を認めなくなった」という理解は、正確ではありません。
時効
不法行為による損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。
「知った時から」なので、発覚が遅ければ、何年も前のことでも請求されうるという点に注意が必要です。
責任が否定されうる場合
次のような事情があれば、責任が否定される、あるいは減額されることがあります。
- 不貞行為の時点で、婚姻関係がすでに破綻していた
- 相手が既婚であることを知らず、知らないことに過失もなかった
- 時効が完成している
ただし、「破綻していた」の認定は厳格です。別居していた、会話がなかった、というだけでは足りず、修復の見込みがない状態であったことが必要とされます。相手方の「もう終わっている」という説明を鵜呑みにするのは危険です。
証拠について
慰謝料請求では、性的関係の存在を示す証拠が問題になります。実務上、次のようなものが用いられます。
- ホテルへの出入りの記録・写真
- メッセージのやりとり
- 位置情報
- 本人の認めた発言
メッセージは削除しても復元されることがあり、消したこと自体が不利に働く場合もあります。
職業上の影響
法的責任とは別に、事実上の影響があります。
- 職場が同じ場合の異動・退職
- 社内規程による処分
- 共通の知人関係の喪失
- こどもへの影響
これらは金額に換算されませんが、実際の損失としては大きいことがあります。
判断材料として
この記事は、やめるべきだと言うためのものではありません。
ただ、リスクの大きさを知らないまま進むことと、知ったうえで判断することは違います。特に、慰謝料の請求先が自分単独になりうる点、時効が「知った時から」である点は、事前に知られていないことが多い。
決めるのは本人ですが、材料は揃えてからのほうがいい。
よくある質問
不倫は犯罪ですか?
犯罪ではありません。かつての姦通罪は1947年の刑法改正で廃止されています。ただし民事上の不法行為として、損害賠償(慰謝料)の対象になりえます。
相手が既婚だと知らなかった場合は?
故意・過失がなければ責任を問われない場合があります。ただし「知らなかった」の立証は容易ではなく、調べる機会があったとされれば過失が認定されることがあります。
すでに夫婦関係が破綻していた場合は?
不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたと認められれば、賠償責任が否定されることがあります。ただし「破綻」の認定は厳格で、別居していれば当然に認められるわけではありません。
参考・出典
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