つらい記憶が性に影を落とすとき|相談先と回復の道すじ
触れられると固まる、途中で記憶が戻る、自分を責めてしまう。これは弱さではなく反応です。相談できる場所と、回復のために知っておきたいことを整理します。
この記事は一般的な情報提供であり、診断・治療にあたるものではありません。痛み・出血・発熱・強い不安など気になる症状があるときは、自己判断せず婦人科を受診してください。
パートナーとの時間の途中で、急に身体が固まる。特定の言葉や体勢で記憶が戻る。相手に悪気がないと分かっているのに、涙が出る。
こうした反応が起きるとき、多くの人が最初に責めるのは自分です。「気にしすぎ」「もう終わったこと」「相手に悪い」。
けれどこれらは、性格の問題ではなく、反応です。
何が起きているのか
強い恐怖や無力感を伴う経験のあと、からだは似た状況に敏感になります。似た体勢、におい、言葉、暗さ。本人が意識していなくても、身体が先に警戒します。
このとき起きること。
- 身体がこわばる、動けなくなる
- 感覚が遠のく、自分が自分でないように感じる
- 突然、当時の場面が浮かぶ
- 涙が止まらない、あるいは何も感じない
どれも意識でコントロールできない反応です。 「気にしないようにする」で対処できるものではありません。
よくある誤解を先に外す
「抵抗しなかったから同意していた」ではない。 恐怖のもとで身体が動かなくなる反応は、広く知られています。動けなかったことは、望んでいたことを意味しません。
「身体が反応したから望んでいた」ではない。 身体反応と主観的な意思は独立して起こりえます。この誤解が、被害を受けた人を長く苦しめてきました。
「時間が経てば消える」とは限らない。 何年も経ってから影響が出ることもあります。時間の経過は、相談しない理由になりません。
「大したことではないから」という基準はない。 何が影響を残すかは、出来事の種類ではなく、その人にどう作用したかで決まります。
相談できる場所
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター。 全国共通の短縮番号 #8891(はやくワンストップ)で、最寄りのセンターにつながります。NTTひかり電話からは 0120-8891-77。
被害からの時間経過にかかわらず相談でき、必要に応じて医療・法律・心理の支援につないでもらえます。証拠保全や費用の公費負担が関わるのは急性期ですが、時間が経ってからの相談も対象です。
自治体によってはLINEなどのSNSで相談できる窓口もあります(内閣府のページから確認できます)。
医療機関。 トラウマに関連した症状には、心療内科・精神科で対応できる治療法があります。婦人科の身体症状と並行して扱うことも可能です。
カウンセリング。 トラウマに特化した支援を行っている専門家がいます。
パートナーがいる場合
伝えるかどうかは自由です。伝える義務はありません。詳細を話す必要もありません。
伝える場合、必要なのは説明ではなく、取り決めです。
- 特定の状況(暗い、押さえられる、後ろから、など)を避けてほしい
- 途中で止めることがある。理由は聞かないでほしい
- 固まったときは、離れて待ってほしい
「なぜ」を説明しなくても、この3つは伝えられます。 過去を明かすことと、安全を確保することは別です。
回復について
回復は直線ではありません。良くなったと思った時期のあとに、また戻ることがあります。これは後退ではなく、経過に含まれるものです。
そして、回復のゴールは「以前と同じになること」ではありません。 起きたことをなかったことにはできない一方で、その記憶に日常が支配されない状態を作ることはできます。
いま、できること
無理に向き合う必要はありません。まずは、次のどれか一つだけで十分です。
- 番号(#8891)を控えておく
- 自分を責める言葉が浮かんだら、「これは反応だ」と言い換えてみる
- 苦しい状況を避ける(避けることは逃げではありません)
一人で抱えなくていい問題であるというところまで届けば、この記事の役割は果たせています。
施術やトレーニング施設での出来事がきっかけの場合は、施術中に不快なことをされたらとジムで感じる視線と撮影のことに相談先をまとめています。
よくある質問
ずっと前のことでも相談できますか?
できます。時間が経っていても相談を受け付けている窓口があります。「今さら」という理由で対象外になることはありません。
抵抗できなかった自分が悪いのでしょうか。
違います。恐怖のもとで身体が動かなくなる反応(凍りつき)は広く知られており、抵抗しなかったことは同意を意味しません。責任は行為をした側にあります。
身体が反応してしまったことが受け入れられません。
身体反応は意思とは独立して起きることがあります。反応があったことは望んでいたことを意味しません。この点で自分を責める必要はまったくありません。